宮島の弥山に鹿はいた|宮島の原生林を実際に歩いて分かったこと

宮島の有名な山といえば弥山(みせん)です。

今回は、宮島で最も高い標高535mの弥山を実際に登り、「鹿はいるのか」「山の植生はどうなっているのか」を確かめてきました。

結論から言うと、弥山には鹿はいました。

しかし、鹿が十分に暮らせるだけの餌資源が豊富にあるとは感じませんでした。

しかこ

山の中にも鹿さんの餌はあまりないの?

目次
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宮島の弥山の植生と環境

新緑がものすごく綺麗な季節でした

友人と登ることにしたのは紅葉谷コース。

子供の頃は両親が登山好きだったこともあり、毎年のように弥山に登っていました。

ロープウェイを使わずに登るなら、一番距離が短い紅葉谷コースが初心者向けです。

初心者向けと言っても、険しい道もあるので下から登るなら登山の装備が望ましいです

見えている地面の植物は鹿さん食べられません

実際に山の中を歩いた様子を動画で撮影しましたので、以下の動画をご覧ください。

日付は、新緑がきれいな2026年5月1日です。

宮島の弥山登山で出会った2頭の鹿

鹿には、弥山に登る途中に1頭と、弥山山頂でもう一頭出会うことができました。

実際に「弥山にも鹿がいる」ということを、この目で確かめることができました。

弥山の霊火堂前にいた鹿さん

それにしても、弥山の山頂に鹿がいるのには少し驚きました。

山頂付近となると勾配も急ですが、鹿は登れるんですね。

さすが、運動能力が高いです。

宮島の鹿と宮島の猿をモチーフとした名産品“鹿猿” 引用:ウィキペディア

子供の頃に弥山に登った際は、山には猿もいて、観光の目玉のひとつとされていました。

かつては、鹿猿(しかざる)という、鹿の上に猿が乗っている名産品がありました。

弥山の頂上付近で、何か食べ物を手に持っていると、猿に取られるので気を付けていた記憶があります。

宮島の猿の歴史🐒

1962年(昭和37年)香川県の小豆島から47頭のニホンザルが宮島へ移入。
1980年代後半には生態系への影響が大きいことから、広島県や関係機関によって捕獲・移送。
1998年(平成10年)頃最後の群れが捕獲され、宮島から野生のサルはいなくなる。

宮島の原生林には鹿が食べられない植物ばかり

囲いで植物が保護されていました

登山中に、囲いがしてある植物を見つけました。

鹿が食べるのを防ぐために囲われているものと思われます。

ということは、食べられる植物がそれだけ少ないとも考えられます

もし、鹿が食べられる植物が十分にあるのであれば、一部の植物を囲って保護する必要性は低いからです。

山頂付近の大きな岩場です。見えている植物は鹿さん食べられません

そして、山の中に広い芝地は見当たりませんでした。

通常は、木々で覆われた山の中は光が差しづらく、草が生えにくいと言われています。

実際に、弥山の登山道を歩いた感想としては、給餌で訪れる場所と同じような植生だなと感じました。

しかこ

同じ島だから生えている植物も同じものが多いよね

宮島の鹿は、主に樹木を食べている?

広島大学の資料には、

宮島のシカは、主に樹木を食べています。草本植物も食べますが量的にはごく少量です。引用:広島大学デジタルミュージアム

との記載があります。

この書き方は、誤解を招く可能性のある表現だなと感じます。

「樹木を食べる」というのは、木そのもの(幹や太い枝)を食べるという意味ではありません。

ニホンジカの場合は主に、

  • 🌿 木の葉
  • 🌱 若芽・新芽
  • 🌸 花
  • 🌿 細い枝(柔らかい部分)
  • 🍂 落ち葉
  • 🪵 樹皮(冬など餌が少ない時期にかじることもある)

を食べます。

これらの中でも、ニホンジカは通常、葉・新芽・草本類を主に食べ、落ち葉や樹皮は餌が少ない時期に利用が増える傾向があります。

「樹木を食べる」というのは、木本植物(木になる植物)の葉や新芽を主に利用するという意味なのです。

宮島の鹿の餌資源を語るには、木本植物の木の葉、若芽や新芽が今の頭数をまかなうだけ十分にあるかどうかが重要です。

写真の葉は鹿さんが食べられない植物です

「鹿が樹木を食べる」という事実からは、

  • 鹿が木本植物を利用する動物である
  • 宮島でも実際に木本植物を食べている

ということしか言えません。

なのでそこから、現在の推定約600頭の鹿が自然の餌資源だけで維持できる、という結論は導けないのです。

宮島のシカは、主に樹木を食べています。草本植物も食べますが量的にはごく少量です

という書き方は、

宮島の原生林には木がたくさんあるから、推定600頭の鹿は宮島の自然の中で十分に生きていける

という、思い込み(誤解)をしてしまう可能性があります。

しかこ

何だか紛らわしい書き方ね

人で例えると、「人は米を食べます」という事実は、「この町の全住民が米だけで十分に生活できます」という証明にはならないのと同じです

私が見た限りでは、目で見える植物は、鹿が食べられないものだけが残っている風景でした。

鹿は限られた餌資源を利用しながら、場合によっては弥山の登山者から与えられる食べ物にも依存している可能性があるのではないか、と感じました。

弥山に鹿が群れでいる様子はなかった

弥山山頂にいた鹿さん

今回の弥山登山では、2頭の鹿に会うことができました。

鹿は本来、群れで暮らす生き物ですが、弥山では群れでいる鹿は確認できませんでした。

群れどころか、2頭とも単独行動をしている雄鹿でした。

しかこ

食べ物がたくさんあればもっと鹿さんいるもんね

弥山に「鹿がいること」と「餌資源が十分にあること」は別の話なのです。

これは、宮島の裏側である、大砂利を観察して感じたことと同じでした。

厳島神社の大鳥居と弥山

宮島の弥山に鹿の十分な餌資源があるのであれば、今回の登山でももう少し多くの鹿や群れに出会う可能性もあったのではないか、と感じました。

ですが実際には、弥山原生林ではなく芝地がある包ヶ浦自然公園や大元公園の平地で、多くの鹿は日中を過ごしているのです。

鹿は本来、芝地と山を往復して暮らす

包ヶ浦自然公園の鹿さん

鹿は本来、芝地と山を往復して暮らす動物です。

夜は姿を隠す意味でも、山で休む習性を持っているため、宮島の鹿も夜になると山に帰ります。

宮島の市街地にいる鹿もです。

しかこ

市街地の鹿さんも夜は山に帰るのね

そして、朝になると餌を探しに日当たりの良い芝地や市街地に降りてきます。

早朝の包ヶ浦自然公園の鹿さん

宮島では、包ヶ浦自然公園や大元公園に芝地があります。

廿日市市は、鹿を山に返すことを目標にしているようですが、そもそも鹿の習性にそれらは合致しているのでしょうか。

山頂にいた鹿さん

5月1日という新緑の季節、広島市内では雑草がいたるところに生い茂っている状態でしたが、宮島の山の中に鹿が食べられそうな雑草はほとんど見かけませんでした。

鹿が多すぎるから食害でそうなっているだけ

と言われそうですが、

現在の推定約600頭まで鹿が増えたのは、人間が長年に渡り深く関わってきたからです。

確かに、宮島の植物が減ってしまったのは、鹿が食べたからです。

ですがそれらは、そもそも人間が鹿を外部から宮島に連れてきて、囲いを作り増やし、長年観光利用してきたから生まれた環境です。

しかこ

なんで鹿さんのせいにするの?

つまり、「人間が宮島の貴重な植物を減らす要因を作った」というのが “本質” だと言えます。

誰が悪いのか、という犯人探しをしたいのではりません。

これまでやっていきた人間の行いを、一度きちんと反省しなければ、今後も同じことを繰り返す可能性があることを危惧しています。

より良い社会にしていくために、過去の行いを反省して次に活かすことが重要だと考えているのです。

宮島の鹿と人の歴史

弥山登山で分かったこと

大元公園で餌を探す鹿さん

今回は、実際に宮島の弥山を登って、登山道の植生などを観察してみました。

弥山に鹿はいました。

しかし、

「鹿がいること」と「十分な餌資源があること」は全く別の問題です。

「山に鹿がいる」という事実だけでは、約600頭の鹿が山だけで暮らせる根拠にはなりません。

鹿さん

山には食べるもの少ないよ

廿日市市も、資料の中で「鹿の餌資源は今後の課題である」と明記しています。

こちらの記事で紹介

鹿の餌資源はあくまでも「今後の課題」であり、それ以上は詳しく調べられていないのが現状です。

宮島では、植生や食害に関する研究は豊富にあります。

ですが、「鹿が年間必要とする餌資源量と、島が供給できる餌資源量を比較した研究」は、公開されている範囲では確認できませんでした

一方で、日本には餌資源量そのものを測る研究手法は存在します。

しかこ

え、研究手法はあるのに、ずっと調べられていないのね

現在の、ただ給餌禁止をお願いするだけの施策のままでは、万が一ボランティアによる給餌活動が出来なくなるようなことがあれば一体どうなるのでしょうか。

宮島の鹿を、本当に野生の中で生かしていくというのであれば、給餌禁止だけではなく、餌資源をどう確保するのかという視点も必要ではないでしょうか。

今回、宮島の弥山を歩いて確認した範囲では、鹿が十分に利用できる餌植物が豊富にあるという印象は受けませんでした。




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