いつくしかの理念

私たちは、鹿を苦しめることなく、
人と自然が調和したかたちで未来へとつないでいくことを大切にしています。

宮島の鹿は、単なる野生動物ではなく、
長い時間をかけて人と関わり合いながら、この島で生きてきた存在です。
その関係の中で現在の姿がある以上、
そこで生じている問題に対しても、人が責任をもって向き合う必要があると考えています。

私たちが大切にしているのは、結果だけではなく、その過程です。
野生へと戻していくこと自体を否定するものではありません。
しかし、その過程において、目の前の命に過度な苦しみを与えないこと。
できる限り穏やかに、段階的に移行していくことが重要だと考えています。

現場では、小さな行動が今この瞬間の命を支えています。
そうした営みを単なる是非で分けるのではなく、
どのような役割を果たしているのかを丁寧に見つめ、
社会全体で考えていくことが必要ではないでしょうか。

宮島は、島そのものが大切にされてきた特別な場所です。
その中で共に生きる鹿たちもまた、
この島の一部として尊重される存在であるべきだと、私たちは考えています。

弱い立場にある存在にどのように向き合うかは、その社会のあり方を映すものです。
だからこそ私たちは、鹿の命に対しても誠実でありたいと願っています。

「いつくしか」は、
鹿を苦しめることなく、徐々に本来の姿へと近づけていくこと、
そして人と自然がよりよい関係で共に在ることを目指して、
これからも静かに向き合い続けていきます。

いつくしか 岡本貴晶