宮島で2026年に入り、人がキツネにかまれる被害が複数確認されていることが報道されました。
報道によると、5月に1件、8月に2件、9月に1件の被害が確認され、8月には救急搬送されたケースもあったとのことです。
廿日市市は「近づかない、触らない、エサを与えない」と注意を呼びかけており、今後はわなの設置などによる捕獲も検討していると報じられています。
野生動物の生態に詳しい専門家からは、キツネが人に近づいている状況について「相当慣れている状況がうかがえる。餌をもらっている可能性がある」との指摘もされています。
私たちは宮島で鹿への給餌活動を行っていることから、今回の報道を受け、キツネと給餌との関係について、現時点で分かっていることを整理しておきたいと思います。
参考:中国新聞「宮島には「いない」はず…、キツネが人をかみ救急搬送 シカを襲ったとの情報も 市は捕獲を検討」(2026年10月3日最終更新)
「餌をもらっている可能性がある」と専門家が指摘

キツネは本来、人への警戒心が強い野生動物とされています。
今回の報道では、人の近くまで寄ってくるキツネが確認されていることから、専門家が、人から餌をもらうなどして人に慣れている可能性を指摘しています。
ただし、ここで注意したいのは、現時点では「餌をもらっている可能性がある」という段階であることです。
キツネが実際に人から餌を与えられているのか、仮に与えられているとすれば、どのような場所で、誰から、何を、どの程度与えられているのかについては、今回の報道からは明らかになっていません。
そのため、キツネが人に慣れた原因については、今後の調査や情報を確認していく必要があります。
キツネは何を食べる動物なのか

キツネは肉食性の強い雑食動物で、小型の哺乳類や鳥類、昆虫などのほか、果実や植物質など、さまざまなものを食べます。
そのため、「鹿に与える餌だからキツネは食べない」と考えることはできません。
私たちが鹿に与えている餌の中にも、穀類など、キツネが口にする可能性のあるものが含まれています。
大切なのは、餌の種類だけではなく、どのような時間帯に、どのような方法で与え、その後どの程度残っているのかまで含めて考えることだと思います。
鹿への給餌がキツネを呼び寄せているのか

今回の報道を見て、
宮島では鹿への給餌が行われているので、それがキツネを呼び寄せているのではないか。
と考える方もおられるかもしれません。
しかし、現時点で報道されている内容からは、今回のキツネによる人的被害と、宮島で行われている鹿への給餌活動との因果関係は明らかになっていません。
一方で、鹿に与える餌の中にはキツネが食べる可能性のあるものもあるため、いつくしかとしても、給餌方法について改めて確認しておくことは大切だと考えています。
いつくしかではどのように給餌しているのか

いつくしかでは、基本的に毎週日曜日の午前中に、宮島の鹿への給餌活動を行っています。
私たちは、鹿が生きていくために最低限必要な食べ物を補うという考えのもと、必要以上の給餌は行わないようにしています。
そのため、給餌も基本的に週1回です。
現在与えているものは、
- ヘイキューブ☘️
- チモシー☘️
- ラビットフード
- 米ぬか🌾
- 人参🥕
- キャベツ🥬
- 圧ぺんコーン🌽
- 古米🌾
- どんぐり🌰
などです。
給餌では、穀類や野菜、ラビットフードなどは、おおむね30分〜1時間以内に鹿がほぼ食べ切ります。

(※給餌して40分後に撮影)
給餌後に残ることがあるのは、主にチモシーとドングリです。
この二つについては、次の日まで残ることもあります。
チモシーは牧草であり、キツネにとって主要な食物ではありません。
キツネは雑食性のため、ドングリなどの植物質を食べる可能性は否定できませんが、これまでの給餌活動の中で、キツネが食べているところを私たちは確認していません。
つまり、穀類や野菜、ラビットフードなどについては、鹿が食べ切れないほど大量に残したまま、その場を離れているわけではありません。
今回の報道では、キツネが人から餌をもらうことなどによって、人に慣れている可能性が指摘されています。
私たちの給餌活動は鹿を対象としたものであり、キツネに直接餌を与えることはありません。

また、給餌が終われば私たちはその場を離れており、キツネに餌を与えながら人の近くに留まらせるような活動も行っていません。
そのため、少なくとも「人からキツネへ直接餌を与えることで、人と餌を結びつけて学習する」という形の人慣れとは、私たちの給餌方法は異なります。
実際にどのような方法で給餌しているのかをお伝えしたうえで、今後明らかになる情報についても確認していきたいと考えています。
キツネは主に夜間に活動する動物

キツネは一般に、夜間や夕暮れ・明け方を中心に活動する傾向がある動物です。
ただし、昼間にまったく活動しないというわけではありません。
いつくしかの給餌活動は日曜日の午前中に行っており、前述したように、穀類や野菜、ラビットフードなどは、おおむね30分〜1時間ほどで鹿が食べ切ります。
そのため、私たちの給餌は、キツネが活動しやすい夜間まで、穀類や野菜、ラビットフードなどを大量に残しておくような方法ではありません。
今回報道された人的被害のうち、8月の2件については、1件が未明から明け方、もう1件が夜の11時ごろに発生したと報じられています。
こうした時間帯についても、給餌との関係を考える際の一つの情報として確認しておく必要があると思います。
野生動物への「給餌」を一括りにしないことも大切

野生動物への給餌について考えるとき、「餌を与える」という行為だけを見れば、すべて同じように見えるかもしれません。
しかし、対象となる動物、給餌の目的、餌の種類や量、与える場所や時間、その後の管理などによって状況は異なります。
例えば、人への警戒心が強い野生のキツネに人が直接餌を与えることと、宮島で鹿の状態を確認しながら行っている私たちの給餌活動は、目的や方法が異なります。
私たちも、キツネに餌を与えて人への警戒心を失わせることには賛成していません。
一方で、「野生動物への給餌」という言葉だけですべてを一括りにするのではなく、それぞれの状況を確認したうえで考えることが大切ではないかと思います。
今後も状況を確認しながら給餌方法を考えていきます

今回、宮島でキツネによる人的被害が確認されたことは、私たちも注意して見ていく必要があると考えています。
現時点では、キツネが人に慣れた原因や、鹿への給餌活動との関係は明らかになっていません。
そのため、原因が分からない段階で特定の活動と結びつけることも、反対に「絶対に関係がない」と断定することも、どちらも慎重であるべきだと考えています
今後、廿日市市や専門家による調査などによって新しい事実が明らかになった場合には、私たちもその内容を確認していきます。
そして、鹿への給餌方法について改善すべき点が見つかった場合には、必要に応じて見直していきたいと思います。
鹿だけでなく、キツネを含めた宮島の野生動物と人との関係について、これからも現場を見ながら考えていきます。
