宮島において、唯一の広大な芝がある包ヶ浦自然公園。
ここの写真を目にすると
宮島には広大な芝地があり、鹿の食べられる草が豊富にあるんだね
と思われるかもしれません。
確かに、自然の一部のようにも見えますよね。
ですが実際には、包ヶ浦自然公園の芝地は人の手で造成・整備された土地でした。
この記事では、包ヶ浦の芝地が人工的に作られたという証拠と、それにより考えられる状況ついてお伝えします。
包ヶ浦自然公園の芝地は人工的に作られた

宮島の桟橋から歩いて40分(車で8分)ほどの場所に、包ヶ浦自然公園があります。
ここには広い芝地がありますが、林野庁の公式ページ内にある「近畿中国森林管理局」の資料から、人工的に作られた芝地であることが分かりました。
Googleマップで確認すると、包ヶ浦自然公園がある場所が以下です。

そして、林野庁のPDF資料の16ページにある、該当箇所がこちらです。
出典は環境省の資料のようです。

環境省「宮島の景観生態学研究(日本野外研究、2000年3月号)」
右上の矢印で指し示した「ここ」部分が、包ヶ浦自然公園がある場所と一致します。
該当部分はピンク色に塗られていますが、植生図では、包ヶ浦自然公園の一帯は「人工改変地」に分類されています。
人工改変地とは、自然の植生や地形が大きく改変された場所であり、人間の活動によって作り出された土地を指します
つまり、包ヶ浦自然公園の芝地は自然に生えた草地ではなく、人工的に作られた芝地だということです。
専門家の知見では、ここの芝により約30頭の鹿が生きていけるそうです。

極端に短い芝と鹿さん
一見すると春夏は緑色に覆われた広大な芝地ですが、芝が伸びるとすぐに鹿が食べるので、常に短い状態で維持されています。
包ヶ浦には、鹿が100頭以上生息しており、この芝地だけでは残りの鹿70頭は生きていけないのです。
人工的に作られた芝地である意味とは

よくSNSなどで、包ヶ浦自然公園の芝を食べる鹿の写真を出して
宮島には鹿の食べられる芝地が豊富にある
鹿は芝を食べてよく太っている
といった発信をする方がおられます。
ですが実際には、これだけの芝地でも、鹿30頭がやっと生きていけるだけの量です。
そして、人工的に作られた芝地ということは、
宮島には元々、広い芝地がなかったことを意味します
鹿は、平地の芝地を好む草食動物です。
放牧された牛を想像してもらうと分かりやすいですが、広い牧草地で草を食べていますよね。
鹿も牛と同じ4つの胃袋を持つ草食動物なので、牛とは共通点が多いです

鹿も、本来はそのような平地の芝地を好みます。
ところが、宮島の原生林は急斜面が多く、鹿が生息するには適していません。
だからこそ、人工的に作られた包ヶ浦自然公園の芝地を好み、ここに鹿が100頭以上も生息しているのです。
宮島には自然の芝地がほとんどない

写真:大元公園
林野庁の資料により、包ヶ浦自然公園の芝地が人工的に作られた芝地だということが分かりました。
包ヶ浦自然公園以外にも、狭いですが宮島には数ヶ所ほど芝地があります。
それが、
- 大元公園
- 福祉センター下広場
- 波止場手前のトンネル付近
- 波止場
- 筋違橋付近
などです。
数少ない狭い芝地に、それぞれ別グループの鹿たちが生息しています。
といっても、これらの芝も本当にごく僅かで、今の鹿たちが生きていけるだけの芝の量はありません。
だからこそ廿日市市行政も「山の中に鹿の餌が豊富にある」と伝えているのです
宮島にある芝地で、鹿の餌がまかなえるのであれば、山の中に鹿の餌があるとは伝えないでしょう。
「山の中に鹿の餌が豊富にある」という事そのものが虚偽なのですが、それは一旦置いておいて、宮島にある芝地は鹿たちが生きていける量ではないことを、廿日市市も把握しているのです。

福祉センター下広場の短い芝
中国新聞に掲載された記事によると
中国新聞(’09/6/23 )
包ヶ浦では肥料をやって草の生育を促す一方、芝の生育量とシカの食べる量との関係も調べる。島南部の藤ヶ浦も候補地として検討
と書かれていました。
人間が観光利用のために増やした、現在の鹿の頭数をまかなうだけの芝地が宮島にないからこそ、かつて芝地の増設が検討されたのです。
結局、芝地は増設されることなく、この計画自体が形骸化しました。(※意図的?)
その間にも、ボランティアが給餌をしていましたので、鹿が飢えないための維持活動を、給餌ボランティアに依存するという構図がこの時に作られたのです。
宮島唯一の広い芝地に高級ホテルを誘致する行政

人工的に作られた包ヶ浦の芝地は、今の鹿たちにとっては貴重な食糧源です。
ところが、この場所に高級ホテルを誘致しようとしているのが廿日市市です。
私たちは、ここの芝地を鹿たちのために残すことがとても重要だと考えています。
宮島の山には鹿の食べられる植物が極端に少ないため、鹿たちは自然状態であっても飢餓に近い状態でいます
それなのに、この事実を廿日市市は一向に認めようとしません。
挙げ句の果てには、貴重な包ヶ浦自然公園の芝地を、民間企業に貸すというのです。
そして、なぜだか分かりませんが、高級ホテルに異常なまでにこだわっています。
ボランティアが給餌して周るポイントの中でも、包ヶ浦自然公園は一番鹿が多く生息しています。
広大な芝地があるように見えても、
実際は人工的に作られた芝地であり、しかもここの芝地で生きていける鹿は約30頭
ですので、ボランティアによる給餌活動のお陰で、包ヶ浦自然公園に生息する70頭以上の鹿たちは命を繋ぐことができているのです。