宮島包ヶ浦自然公園の利活用方針説明会が、令和7年3月と4月に合計4回行われました。
内容はどれも同じで、廿日市市の説明(40分程度)の後に、市民が質問して行政が答えるという形でした。
廿日市市の包ヶ浦市活用説明(40分動画)
この度は、廿日市市に対して2つの懸念について質問しました。
その様子を、宮島の鹿さんチャンネルで公開しています。
懸念点2つ
その1:富裕層の外国人による日本の観光地占領の懸念
その2:包ヶ浦自然公園の民間活用による鹿への悪影響
富裕層の外国人による日本の観光地占領の懸念

宮島包ヶ浦自然公園は国立公園なので、工事の規制がかなり厳しく莫大なお金が必要です。
ですので、大企業でないと誘致に手を挙げることができません。
日本には高級ホテル企業が少ないので、おそらく外資系の大企業を誘致することになります。
高級ホテルの旅行者は主に富裕層の外国人なので、サービス向上のために従業員は、中国語や英語が話せる外国人になるでしょう
この高級宿泊施設を起点に、インバウンド需要に頼り高級路線で進め続けると、宮島内の食べ物やサービスの価格が徐々に高騰していきます。
これはすでに、京都市内、北海道ニセコ、長野県軽井沢、長野県白馬村などで起きています
宮島も同じようになれば、お金のない日本人観光客が減り、島全体が外国人だらけになります。
すでに宮島では4割程度は外国人観光客ですが、有名観光地だと9割が外国人旅行客となっています。
その後は、地元住民も、地価の高騰や物価上昇、飛び交う言語の問題で住みづらくなり、お店を閉めて土地を売り、島から出て行かざるを得なくなります。

その売りにだされた土地やお店を、お金持ちの富裕層が買い占めます。
外国人富裕層だらけになった宮島では、これまで先人が受け継ぎ守って来た伝統文化や食文化が衰退し、治安が悪化すると予想できます
日本らしい魅力を感じなくなった一般の外国人観光客は、やがて宮島を訪れなくなるでしょう。
そして、最後に残るのは富裕層だけの島になった世界遺産・宮島です。
観光地占領の懸念については、以下のニュース動画を合わせてご覧ください。
「第2のニセコ」白馬村が目指す“新たな観光地” 外国人客が殺到も 地元住民「ニセコみたいになったら困る」
包ヶ浦自然公園の民間活用による鹿への悪影響

宮島は鹿を奈良県から連れて来て、神鹿苑(しんろくえん)という施設の中で飼育し増やしました。
宮島は花崗岩質のやせた土壌で、鹿の食べられる雑草が少なく、鹿にとっては自然状態でも飢餓に近い状態です。
宮島では、鹿のエサ資源が僅かなのです。
この事実があるにも関わらず、
廿日市市は市民に「山の中に鹿が十分にある」という虚偽を伝えています
包ヶ浦自然公園にホテルを誘致すると、建物や道路、その他の施設の建設により植生が破壊され、鹿の採食地や休憩場所が減少します。
宿泊施設に伴う照明、車両通行、機械音などは、夜行性の動物にとって強いストレス源となります。
施設により芝地が失われれば、飢餓状態の鹿が山中の希少植物を食べ、植生破壊が連鎖的に進行する恐れもあります。
例えそうなったとしても行政は、
自分たちが作り出した根本原因をスルーして、鹿を害獣扱いすると予想できます
廿日市市長の
自然に配慮すれば理解される
という一方的な主張は、事前の住民合意の軽視であり、真の対話とは言えないのです。
廿日市市の返答を聞いて感じたこと

私たちの質問に対して、廿日市市は全く返答できていません。
あらかじめ用意していた回答を、ただ読み上げただけだと感じました。
高級ホテル誘致は何も変わっていない
廿日市市は
富裕層向け一択の誘致ではない
と答えているわけですが、キャンプ場や野生場を “含めて” 検討するだけで、高級ホテル誘致が白紙になったわけではありません。
むしろ高級ホテル誘致計画を変わらず強行しており、私たちが懸念している富裕層の外国人による宮島の占拠の可能性はかなり高いです
これは、 例に挙げた京都市内、北海道ニセコ、長野県軽井沢、長野県白馬村だけでなく、日本中の観光地で起きていることです。
さらに政府は、全国35箇所の国立公園での高級ホテル誘致計画を進めています。


宮島は瀬戸内海国立公園ですから、包ヶ浦自然公園への高級ホテル誘致計画は日本政府による魅力向上事業の一つなのです。
宮島が「富裕層だけの島になる」という懸念を抱いていますが、これが全国35箇所の国立公園と、主要な有名観光地で起こると、その後の日本はどうなってしまうのでしょうか。
日本人の心の拠り所である、美しい自然、伝統文化、伝統技術、日本食文化、マナーや精神性などが壊されてしまえば、日本という国の崩壊は待ったなし、なのではと危惧しています。
先住鹿たちへの悪影響については無視

先住鹿への悪影響に関して廿日市市は「引き続き、鹿の個体数管理の徹底をしていく」方針だと言っています。
私たちが指摘している「宮島の山に鹿の食べられる餌がない」という現状を、全く無視していることがわかります。
個体数を管理する = 鹿の頭数を減らす = 餓死させる
という構図は相変わらずです。
「専門家の知見を借りて作成した、宮島地域シカ保護管理計画に基づいている」
と言われると、もっともらしい返答にも聞こえますが、これも間違いです。

2009年当初作成された宮島地域シカ保護管理計画では、
「餓死しそうな鹿が出て来た場合は、鹿への限定的な餌やりや芝地の増設を検討する」
との記載がありました。
しかし、この宮島地域シカ保護管理計画が改定されるごとに、この部分は形骸化しました。
2009年から市民ボランティアが給餌活動を行うようになり、行政が市民の餌やり活動に依存し始めたのがこの頃です。
もしかすると、廿日市市の説明で納得した方もおられるかもしれません。
ですが、宮島の鹿の歴史を知れば知るほど、それはとんでもない間違えだということが、徐々に分かるようになるのです。