キャベツを与えるのは危険?宮島の鹿と給餌に関する誤解と現実

ネット上では、

キャベツなど人間の食べる野菜を鹿に与えると有害

といった意見を見かけることがあります。

そして中には

キャベツに含まれる硝酸塩が亜硝酸塩に変わり、反芻動物にとっては毒になる

と警鐘を鳴らすものまであります。

果たしてこれは、本当なのでしょうか?

この記事では、現場で活動する給餌ボランティアの立場から、事実と誤解についてお伝えします

目次

キャベツは鹿にとって危険な食べ物?

「鹿にキャベツを与えるのは危険」

という主張は、一部正しい点がありますが、文脈を無視した過剰な一般化が多く見られます

まず結論から言えば、少量のキャベツを週に1回与える程度では、鹿の健康にとっては全く問題ありません

キャベツに含まれる硝酸塩は、ほうれん草や小松菜に比べて低い傾向があり、しかも「大量に摂取した場合」に限って亜硝酸塩中毒のリスクがあると言われているに過ぎません。

鹿に限らず、亜硝酸塩中毒は極端な量を摂取した場合に起こります

私たち人間も、どれほど体に良い食品であっても過剰に摂れば逆効果になります。

納豆を1日100パック食べたら、体に良いどころか具合を悪くしてしまうでしょう。

宮島の鹿の現状を無視した「理想論」は通用しない

宮島は花崗岩質の痩せた土壌で構成されているため、鹿が食べられる植物資源がごくわずかしか存在しません。

そうした島に、観光目的で奈良から鹿が連れてこられ、飼育・繁殖されてきたという経緯があります

宮島に「奈良から鹿を連れてきて増やした」証拠3つ

その結果、もともと限られていた植物の量と、現在の鹿の頭数とのバランスが大きく崩れ、鹿が食べられる植物は非常に少ない環境となりました。

そのような状況の中で、鹿たちは草だけでなく、紙やビニール袋、ブルーシート、ロープ、布類といった本来食べ物ではないものにまで口にしてしまう状態にあります

こうした現状を踏まえれば

人参やキャベツなどの野菜を少量与える行為を、一律に「危険な給餌」と決めつけるのは、現実を見ていない意見だと言わざるを得ません

理想論だけでは、鹿たちの命は守れないのです。

給餌ボランティア活動16年で得た確信

給餌ボランティアは、週に1度、決められた場所・時間・分量で鹿たちに給餌を行っています。

宮島の鹿の餌は主に

  • キャベツ
  • 人参
  • 古米
  • 米ぬか
  • どんぐり
  • チモシー
  • オーツヘイ
  • 圧辺コーン
  • ラビットフード

など、毒性のない安全なものを与えています。

この活動を給餌ボランティアは16年以上続けてきて、鹿たちは元気に生きてきました。

現在与えているキャベツの量が、鹿にとって毒ならば、宮島の鹿たちは生きていないはずです。

一方的な批判よりも、協力を

理想的には「雑草の方が良い」という意見も、もちろん理解できます。

しかし、そのためには行政や地域住民の協力が不可欠です

個人の努力だけでは限界があります。

また、給餌活動している人間は一般人。というご指摘もありますが、それならば鹿の専門家をぜひ呼んで頂けますでしょうか。あと、獣医師と植物の専門家もお願い致します。

現場に来ることもなく、実情も知らず、ネット上のごく一部の情報だけを取り上げて行動している人の足を引っ張るような言動は、鹿たちの未来のためには、残念ながら役立ちません

物事を改善するには、現地の実情を理解し、自分で体験してこそ見えてくることがあります。

そのため、私自身もまずは現地に赴き、16年以上給餌ボランティアをしている米田さんからお話を伺うことから始めました。

まとめ

鹿にキャベツを与えるのは危険?

いいえ、状況と分量をわきまえた上での給餌であれば問題ありません

物事を部分的に切り取って「善意の活動」を批判するのではなく、全体を見て、現場の現実を理解し、支援・協力の形で思いやりを持って関わることこそが、宮島の鹿のために必要なのではないでしょうか。

こういった、一部分に対して批判する人は、根本的に給餌活動の必要性を理解しておらず、むしろ給餌が鹿に対して悪影響を及ぼしているという主張を信じている方です

なので、私たちは基本的に相手をすることはありませんが、そういった主張を信じ、私たちの活動が害を及ぼしていると思い込む人がいるのも事実です

そのような誤解を生まないためにも、今後もこのブログでしっかりと実情をお伝えして行きたいと思います。

この宮島の鹿問題は、歴史、実情、土壌などを多角的に理解し判断する能力がなければ、本質を見誤ってしまいやすいのです。

いつも、鹿さんのためにキャベツをお送りくださる支援者様、本当にありがとうございます。感謝申し上げます。

※本記事は、宮島の現地で継続的に活動を行う立場からの実体験をもとに執筆しています。

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