宮島の鹿について書かれた、2020年2月2日の中国新聞の記事を、取っておいてくださった方がおられます。
この記事は、県立広島大学名誉教授が宮島の鹿問題に対して提言を行い、野生の鹿を取り巻く環境に対して疑問を問う内容となっています。
鹿さんきれいに、保管してくれてありがとう



このような情報、とてもありがたいです


2020年(令和2年)2月22日(土)中国新聞 オピニオン
結論からお伝えすると筆者は、
宮島の現状を踏まえて提言するなら、餌やり禁止を徹底する代わりに十分な芝草地を造成し、シカと人が触れ合える場を創出すべきだろう
と話されています。



やっぱり、宮島には芝地が必要な状況なのね
野生の鹿についても
地域資源として活用する考え方も理解できるが、やはりシカとの共生によるまちづくりが大切ではないのだろうか
とお話しされていて、鹿を駆除するだけの対策ばかりがもてはやされる現状に、疑問を持たれています。



仲間を駆除しないで・・・
以下に、その新聞記事の全文を掲載いたします。
中国新聞に掲載されたシカと観光地への提言


新聞記事の内容を、全文字起こししました。
シカと観光地
県立広島大学名誉教授
四方 康行(しかた やすゆき)
・1950年東京生まれ
・京都大学大学院農学研究科農林経済学専攻・博士課程単位取得退学
・博士(農学)麻市大獣医学部助教授、広島県立大生物資源学部教授
・県立広島大生命環境学部教授を経て16年から同大名誉教授
私の住んでいる広島市安佐北区の団地は山の麓にあり、野生の鹿によく遭遇する。私と妻はシカの姿をみれば「ハヒフー、キョン」と呼び掛けて、コミュニケーションを図っている。ちょっとしたいさかいでお互いに不機嫌なことがあっても、あるいは、そのような時に限って、シカが現れて私たちの仲を取り持ってくれる。私たちにはなくてはならない存在だ。
しかし今、多くの農村部でシカのほかイノシシやサルによる農林業への被害が深刻であり、さまざまな対策や調査研究が行われている。「野生動物との共生」と言った場合、野生動物をどう頭数管理するのか、という提案や実践が多い。確かに被害に遭っている農林業にとっては喫緊の課題だろう。地域資源として利用し、地域を活性化させようという考え方は理解できる。
半面、頭数管理のための捕獲と処分が真に最善の策なのかどうか。日常的に、まぢかにシカを見るにつけ疑問を感じるのも本音なのだ。野生動物の中でも、とりわけシカはクマとは違って、人を攻撃したり、危害をもたらしたりすることはまれである。シカと一緒に暮らすことがどれだけ平和で幸せなことかと実感もしている。
となれば「シカとの共生」によるまちづくりが大切ではないのだろうか。そう考え、昨年5月に放送大学奈良学習センターで行われた面接授業「『奈良のシカ』の社会学」に夫婦で私的に参加した。授業は2日間にわたる集中講義であり、2日目はフィールドに出ての学習だった。
奈良公園でのシカと人の触れ合いはご存知の通りである。思いもよらなかった気付きは、シカによって景観が維持されてきたことだった。シカが地面の芝や樹木の葉を食べてできる景観を「ディアライン(鹿摂食線)」と呼ぶ。つまりシカの生息によって公園のまわりの森が美しく開放的に見渡せるようになっている。シカがもたらす観光へのプラスの高価であり、芝を刈る労力も評価すれば膨大な金額になるはずだ。
過去には「サファリ方式」の動物園にしようという構想もあったようだが、当時の観光協会会長の強い反対で、現在の放牧方式が維持されたと学んだ。シカをシンボルとした奈良の観光はこうして成り立ってきたのである。
さて、わが地元の宮島はどうなっているのか、年明けに足を運んでみた。宮島では2007年から鹿せんべいの販売が中止され、餌やりの禁止とごみの管理の徹底による頭数管理が行われてきたという。その効果があったのか、フェリーから下りて観光客の多い人通りを歩くと、数年前に来た時よりも、さらに減っている印象を受けた。
とはいえ、シカが観光客に食べている菓子をおねだりする様子も気にはなる。餌やり禁止が徹底されているのかどうか、シカと一緒にいた修学旅行生に尋ねると一様に、「餌を与えないように注意を受けている」と答えた。ならば観光客への啓発だけだと思っていたが、食べ物のある食堂や売店の前にシカがいて、中に入ろうとしている。
店の主人は「シカも観光を担ってきたのだから餌をやって何が悪い」と言う。シカと人の長い間柄を考えると、山に返すだけでよいのか。山に返せば原生林への被害も出てこよう。基本的には自然のままがよい。動植物全てが相互に関係して生態系が成り立っている。人為的に管理すべきではなく、むしろ人間が自然を変えてきたつけが今大きな問題となっている。
宮島の現状を踏まえて提言するなら、餌やり禁止を徹底する代わりに十分な芝草地を造成し、シカと人が増え合える場を創出すべきだろう。瀬戸内海を背景にしたシカの立ち姿も貴重である。フェリーの発着場前の広場から、厳島神社に向かう海沿いの参道横にある、段になった松野植樹帯に芝を植えるだけでも違ってこよう。奈良のシカとは違うが、観光への貢献は同じである。
以上が、中国新聞に掲載された記事の内容です。
こちらの記事内容は、筆者個人の意見であり、中国新聞社の見解ではありませんのでご注意ください。
宮島の鹿について


新聞記事を読んだ私の感想ですが、記事内容を抜粋しながら、それぞれ思うことををお伝えします。
四方名誉教授は
宮島の現状を踏まえて提言するなら、餌やり禁止を徹底する代わりに十分な芝草地を造成し、シカと人が増え合える場を創出すべきだろう
とおっしゃられていますが、まさにその通りだと思っています。
初版の宮島地域シカ保護管理計画に記載されていた通り、餌やり禁止にするのならば、鹿のための芝草地を造成するのが良いと考えています。
フェリーの発着場前の広場から、厳島神社に向かう海沿いの参道横にある、段になった松野植樹帯に芝を植えるだけでも違ってこよう
この場所は、多くの観光客が厳島神社に向かう道中なので、そこで鹿たちのための芝地を増設するのはどうか、という提案をされています。
もし、それが大掛かりで莫大なお金がかかるため出来ないのなら、
- 給餌ボランティアを公式に認めて支援をする
- 宮島の現状を、一般の方にも理解してもらえるよう広報する
などの、具体的な行動が必要であると感じています。
実際に米田さんを始め、私たちがやっていることは、本来行政として取り組むべきことではないでしょうか。


それを現在は、ボランティアと支援者が「行政の仕事をしている」という構図になっているな、と感じています。
実際に給餌活動をしていると、行政の人間だと思われることもあるくらいです。



宮島の鹿さんボランティアは、子ども食堂と似た構図なのよね
四方名誉教授は、奈良の鹿の視察に行かれて
シカがもたらす観光へのプラスの高価であり、芝を刈る労力も評価すれば膨大な金額になるはずだ
と言われています。



私たち、長年宮島に貢献してきたよ
鹿を観光利用してきた観光地での、鹿たちの貢献度は計り知れません。
だとするなら、昔のように鹿のために予算を組むのは当然であって、鹿のお世話をボランティアと支援者任せにすることはおかしいと言えるのではないでしょうか。
その上で、苦しませないように鹿の頭数を減らしていく、施策を考えれば良いだけです。
一般的な野生の鹿について


写真は宮島の鹿です
現在は、野生の鹿やイノシシを害獣とみなして、毎年数多くの命を奪っています。
宮島では、それはかろうじて阻止された歴史がありますが、奈良の鹿であっても、
中心部から離れれば離れるほど害獣扱いとなり、日々殺処分されています
そして、その数は年々増え続けています。
日本国内での、鹿と猪の捕獲同数の推移がこちらです。


この話を、初めて知った方は信じられないかもしれませんが、こちらのグラフの単位は “万” です。
毎年数十万頭の鹿と猪が捕獲され、その多くは殺処分されています。



え!?・・・ こんなにも鹿と猪が殺されているの・・・
そして、駆除した鹿の肉を有効活用しようと、ジビエ料理等が推進されているのが今の日本の現状です。


環境省が発表している、詳しいデータがこちら


出典:環境省 自然環境局『ニホンジカ・イノシシ捕獲頭数速報値』
ここ最近の、ニホンジカの殺処分数です。
- 2022年 ニホンジカ 716,800頭 殺処分
- 2023年 ニホンジカ 722,700頭 殺処分
- 2024年 ニホンジカ 738,700頭 殺処分



なんで殺すの・・・? 人間恐ろしい!
四方名誉教授は中国新聞にて、
頭数管理のための捕獲と処分が真に最善の策なのかどうか。日常的に、まぢかにシカを見るにつけ疑問を感じるのも本音なのだ
という疑問を投げかけておられます。
また、同じように疑問に感じている方というのは、思っているよりも多くおられます。



熊や鹿を、悪者にする報道が多い気がする
ただし、それらの意見や発言はテレビではなかなか扱われないため、一般の方が知るにはSNSが主となるのが現状です。
ですので、このように新聞記事に掲載されたことはとても珍しいです。
まとめ


今回は、県立広島大学の四方名誉教授による提言が、中国新聞に掲載されましたので、その内容をお伝えしました。
記事にあったように、
宮島の現状に対して「十分な芝草地を造成の必要性」を提言してくださる、有識者もおられるということです
また過去には、広島県の大学教授が宮島の給餌ボランティアを手伝ってくれていたこともあります。



宮島の鹿さん給餌活動に、理解のある大学教授もいたのね
何事も、片方の情報だけでなく、広い視野で物事を判断していく必要があると思います。
現在の野生動物の駆除にしても、本当にそれが一番効果的なことなのか、今一度みんなで考えてみる時期に来ているのではないでしょうか。
とんでもない数の鹿や猪を毎年駆除しているにもかかわらず、全く問題が解決していないのですから。
