宮島の鹿への餌やりについて、ネット検索すると違法行為との記事が出てきますが、実際はどうなのでしょうか。
結論としては、
「自然公園法による野生動物への餌付け禁止は、人的被害の可能性がある動物(例えばクマ)を対象と考えられており、宮島のシカはそれに該当しない」
ということになります。
確かに、2022年4月1日に施行された改正自然公園法では、野生動物への給餌は違法行為にあたります。
ですが、宮島の鹿に関してはこの法律は当てはまりません。
この情報は、国や広島県にも確認して頂いた、廿日市市の正式な回答です。
そして、宮島の鹿への餌やり禁止はあくまでも「お願い」ですので、罰則もないのです。
宮島の鹿は改正自然公園法に該当しない
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宮島の鹿が、改正自然公園法に該当しない理由を考えてみたいと思います。
まずは、鹿が人間に危害を加える動物ではないことが、改正自然公園法に該当しない大きな要因と考えられます。
鹿はとても温厚で、危害を加える動物ではありません。だからこそ、大昔から日本各地の観光名地に鹿を利用してきたのです。
鹿を観光利用してきた観光地
- 奈良公園(奈良県)
- 宮島(広島県)
- 金華山(宮城県)
- 奥日光(栃木県)
- 鹿島神宮(茨城県)
宮島もこの中の一つです。
もちろん、改正自然公園法の適応外だからと言って、野生の鹿に餌を与えることが良いわけではないので、そこはご注意願います。その土地の事情に合わせた、臨機応変な対応が求められています。
宮島の鹿は純粋な野生動物?
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現在、行政は宮島の鹿は野生動物であると主張していますが、これまでの長い歴史の中で、観光利用のために鹿に給餌を行なって来たことは事実です。
奈良の鹿と同じように、鹿せんべいを販売して鹿を飼いならしてきました。これにより宮島に鹿が増えて、人間になつき現在の頭数となったのです。
なので、宮島の鹿は昔から山の中で命を繋いできた「純粋な野生動物である」とは言えない側面があります
過去に人間が行ったことを、無かったことにはできないはずですが、現在の行政の対応は、それらのことがまるでなかったかのような扱いがなされています。
この部分を無視して、はたしてこの問題が解決するのでしょうか。まずは、これまで鹿を観光利用してきた歴史が間違いだったと反省することから始めてほしいと考えます。
「鹿を山に返す」
「鹿を野生に戻す」
という言葉がよく用いられます。
鹿も野生で生きていくことを望んでいますので、その考え方自体はすばらしいことのように感じます。
ですが、戦後鹿が減った際に、わざわざ遠く奈良県からつがいを連れてきて、お寺(大願寺)の広場に囲いを作り鹿を飼育したという歴史があります。
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左が大願寺 / 右が厳島神社
つまり、そもそも鹿を観光利用しなければこの宮島の鹿問題自体が起きていません。
野生に戻す、ということは「一旦は人慣れさせた動物」ということを意味しますので、改正自然公園法における純粋な野生動物に、宮島の鹿は該当しないとも考えられます。
正確には「餌付けされた野生動物」だといえます。
国と県と市からの正式な回答
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私自身も廿日市市に問い合わせてみたことがあります。どちらかというと給餌反対支持者のような立ち位置でお話しをうかがったところ
宮島の鹿への餌やりについては違法行為ではあるけども、罰則はない
との回答をいただきました。
これには少しびっくりしましたが、もしかすると、給餌活動に批判的な人向けにこのような回答をされるのかもしれません。
では、実際のところはどうなのでしょうか。
私の知り合い数名が、廿日市市に問い合わせて正式な回答をもらっています。
とのことで、きちんと国や県にも確認を取った、廿日市市農林水産課の正式な回答がこちらです。
野生動物に詳しいWDI代表の岡田さんも、廿日市市に問い合わせた内容を基に記事を書かれています。
行政のお問い合わせ担当者さんは、人によって伝え方を変えているのかもしれません。
ですが、国や県や市の正式見解はきちんと全ての方に伝えてほしいなと思います。無駄な誤解や不安を生み出すことのないようご対応頂きたいです。
廿日市市にお問い合わせする際は「正式回答をお願いします」と伝えてみてください。
というわけで
SNSで噂されている「宮島の鹿への給餌活動は違法」というのは間違いだということになります
宮島の鹿への全ての給餌を禁止にすることと、行政による適切な量の給餌を再開させること、どちらの活動が本当に必要なことなのかを見極める時期に来ているのです。
鹿に餌を与えてきた宮島の歴史
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宮島では昔、鹿桶(しかおけ)というものが家の前に設置され、家庭で出た生ごみなどを鹿に与えていました。
宮島歴史民俗資料館では鹿戸(しかど)という、鹿が外から入れない戸を作り、家の中に鹿が入ってこられない工夫が紹介されています。
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鹿戸は現在も、宮島のお手洗いなどに使用されていますので、宮島を訪れた際は気にしてみてください。
このように、長年にわたり宮島では鹿に餌を与えて観光利用してきた歴史があるのです。
廿日市市の公式ページにも以下のように記載されています。
昔から宮島地域に生息するシカは、自然生態系の重要な構成種ではありますが、保護条例などの制定により住民に大切に扱われてきた歴史があり、住民とともに暮らしてきました。
鹿の保護条例まで制定し、大切に扱ってきた鹿です。
ですが現在は、こういった点については全く触れず、ただただ鹿に餌を与えないように誘導する姿勢が疑問に思えます。ボランティアの給餌活動の功績について行政は認めていませんが、実際にこの給餌活動がなければ鹿たちは悲惨な目に合っていることが想像できます。
宮島の鹿への給餌活動は罰則なし
16年間、宮島の鹿への給餌活動を継続していますが、これまで罰則をもらった人は当然いません。
この給餌活動により、多くの人が迷惑を被っているというのなら、地元住民による大規模な反対デモが起きても不思議ではありません。警察が給餌の度にやって来て、迷惑行為だからやめなさいと伝えてくるかもしれません。
ですが実際には、これらのことは起きていません。それは、宮島の鹿への給餌活動が島の中で、プラスの役割を担っている証拠だからとも考えられます。
給餌ボランティアと支援者が自費で宮島の鹿に餌を与えてくれていることで、実は多大な恩恵を得ている可能性があります。そのことにもきちんと向き合ってもらいたいです。
そのため、罰則もなく16年以上も給餌を放置していますし、むしろ善意で行われる給餌活動を都合よく利用している、との捉え方もできます。
まとめ
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2022年4月1日に改正自然公園法が施行され、野生動物への餌付けは禁止されています。
ですが
自然公園法による野生動物への餌付け禁止は、人的被害の可能性がある動物(例えばクマ)を対象と考えられており、宮島の鹿は該当しません。
宮島の鹿は長年に渡り餌を与えて飼いならし、観光利用してきた鹿です。大昔から「神の使い」だと大切にしていましたし、旧宮島町時代には鹿の保護条例までありました。
それがある日突然、宮島の鹿は野生動物だと主張し始め、「餌やり禁止のお願い」に舵を切ったのです。
そして遂には2022年に改正自然公園法が施行され、宮島の鹿もその対象であると意見をする人たちが出始めました。
しかし、実際には
宮島の鹿への餌やりは改正自然公園法に該当しません
宮島の鹿への給餌活動は違法行為ではありませんのでご安心ください。
私たちは、行政による宮島の鹿への適切な給餌が再開されることを願っています。